何故、今「観光まちづくり」か?
私ども研究会が発足した平成17年当時は「観光まちづくり」という言葉はまだ一般的では無く、ネット検索すると、私ども研究会がトップで出てくるほどでした。しかし最近では「観光まちづくり」という言葉をよく耳にするようになりました。これまで観光地づくり(観光地計画)とまちづくり(都市計画)は、別のものとして考えられてきましたが、今では、この2つは急速に接近を始めています。それは、それぞれの分野で大きな変化が起きているからです。
「観光」の面では、旧来型のマスツーリズムが飽きられ、新しい観光客が関心を持つのは、多くの場合、地域の生活・習慣・行事などの文化であり、観光用に作られたものではなくなっています。地域の人と同じように、できれば地域の人に混じって地域の豊かな生活を楽しみたいという欲求が大変強くなってきています。
一方「まちづくり」の面では、日本の産業構造の変化と共に、地域を支えた基幹産業が衰退した地方都市の停滞が著しいことが問題になっています。地域経済を基幹産業が支えられなくなったときに、「まち」には大きな問題が生じます。その際、地域に歴史的、文化的な資源や活用されていない遺産がある場合、それを活かした「観光産業」を振興し、まちづくりに貢献することが期待されます。
観光まちづくりにとっては、「地域の豊かな生活」が重要です。地域の暮らしぶり自体が豊かでないと、”その地域へ旅をしてみたい”という気持ちへ感化されないことから、観光の振興は、地域の暮らしを豊かにすることと同義になります。これこそが観光まちづくりの目指す地域づくりです。
研究会としての観光まちづくりへの貢献
観光の振興には、交通、施設経営、地域振興、教育、環境など多くの分野での努力と協力が必要となります。
また集客のアイディアが優れていても、観光客が安全・安心・健康・快適にそれを楽しむことができなければ、観光まちづくりは失敗に終わります。もっとも基盤的な要素として、安全・安心・健康・快適を技術的に担保することは、観光客のみならず、住民にとっても生活の質を高めるのに直結しています。
本研究会は、道路、環境、河川、ごみ処理などの「まちづくり」の基盤を担ってきた技術者が中心となって、「観光まちづくり」の成功を、主としてインフラストラクチャー技術から支えられればと願って活動を続けてまいります。